航空機への複合材料の応用は、民間航空機をはじめ、軍用機、ヘリコプターなどにも多くの例がありますが、いずれの場合も機体を軽くして、より高性能な航空機の開発のために複合材料を利用しており、加えて組み立て作業工数の削減などの副次的効果も実現しています。
民間航空機への複合材の利用は、1940年にレーダードームのGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)化から始まりました。1975年には、NASAが研究的にB727やB737のエレベーター(昇降舵)、DC10の尾翼(垂直安定板)などに複合材を利用し金属構造に対して約30%の軽量化に成功しました。
この研究成果を量産機に採用したのは、米国ボーイング社のB757及びB767のラダー(方向舵)が最初です。それとほぼ同時にB767のエレベーター、スポイラー、アウトボードエルロン、翼胴フェアリング、前・主脚扉、主・尾翼トレイリングエッジパネル、垂直・水平安定板リブ等の2次構造材として機体重量の3%程度のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の複合材が使われました。
1994年に初飛行に成功した米国ボーイング社のB777には、損傷許容性が重視される1次構造材として、垂直・水平尾翼安定板及びフロアービームに高靭性CFRPが採用されました。
また、エアバス社においては1988年に就航したA320には、動翼・エンジンナセル等の2次構造材の他に、世界で初めて1次構造材として尾翼にCFRPが採用され、その後、A330及びA340にも全重量の約12%に複合材が採用されています。
エアバスの次期大型旅客機(A380)やボーイングの次期旅客機(B787)では、より広汎にCFRPの採用が計画されており、航空機用途におけるCFRPの利用は、ますます拡大していくものと期待されています。
宇宙分野では、より軽量・高剛性が要求され、H-IIAロケット、人工衛星などで利用されています。