炭素繊維がスポーツ用品に使用されたのは、炭素繊維の特長である高比強度、高比弾性率が評価され、新素材製品として商品化されたためです。1970年代には、釣竿、ゴルフシャフト、テニスラケットに使用され始めました。高価格なため一部のマニア向けの商品でしたが価格低下と共に、需要は一気に高まり、なくてはならない素材となっております。その後、各種のスポーツ・レジャー用品での開発も進み、現在では、次の通り幅広く使用されています。
用途例 | 炭素繊維の利用特性 | |||
釣具 | 釣竿, リール | 軽量化 | 剛性 | 感度 |
ゴルフ | シャフト, ヘッド, フェース板 | 軽量化 | 剛性 | 感度 |
ラケット | テニス, バドミントン, スカッシュ | 軽量化 | 剛性 | 振動減衰性 |
マリーン | ヨット, クルーザー, 競技用ボート, カヌー, マスト | 軽量化 | 剛性 | - |
自転車 | フレーム、フロントフォーク、リム | 軽量化 | 剛性 | - |
その他 | 野球バット, スキー板, ホッケースティック, スキーストック, 剣道竹刀, 和弓, 洋弓, ラジコンカー, 卓球, ビリヤード, ゲートボール | 軽量化 | 剛性 | - |
炭素繊維の特性(軽量・高剛性・ 高感度)を遺憾なく発揮できるアイテムの一つであり、鮎竿を皮切りに微妙な「ひき」の小形魚用に炭素繊維製の釣竿が広がりました。
炭素繊維は剛性が高い(硬い)ので、微妙な「ひき」でも、釣り人の手の延長として感じることができるのです。身近な道具に採用された成功例といえるでしょう。
炭素繊維で作られたゴルフシャフト(カーボンシャフト)は、金属製と比べ非常に軽量なので同じ力で振る場合、スイングスピードはカーボンシャフトの方が速くなります。シニアや女性を中心にカーボンシャフトは、飛距離アップが可能な道具として普及しましたが、今ではプロ・アマ問わず多くのゴルフプレーヤーに愛用されています。
テニスは非常に運動量の多いハードなスポーツです。炭素繊維が使用されたラケットは、木材や金属製のものより格段に軽量化でき、プレーヤーへの負担が軽減できたことから爆発的に普及しました。(スイートスポットが拡大したなどの設計面での進歩もありました。)
炭素繊維を使用することで軽量化が進み、手軽に自動車へ積んで出かけることができるようになりました。
また、競技用カヌーではスピードを出すことに重点を置いており、重量が軽い分だけスピードが出るので、炭素繊維を使用するメリットがあります。また、頑丈なので急流下りなどにも対応できます。
アマチュア野球を中心に炭素繊維製のバットが好評を得ています。
その理由は、打撃時の手のしびれが抑えられる。打球のスピードが速く飛距離が伸びる。打球音・打球感が木製バットに近いなどです。
「健康」と「環境」をキーワードに、自転車が世界的にブームを呼んでいます。本格的自転車ロードレースは欧州で盛んですが、国内でも専用道路を颯爽と走るロードバイクや山岳コース等オフロードでのマウンテンバイクが増えてきています。設計・評価技術の進歩とともに様々な部位に炭素繊維の使用が広がり、現在ではアルミフレーム完成車に対して30%近い軽量化を実現しています。